性的マイノリティにとって、アサーティブを学ぶ意味とは?
- 2020/03/14
- 23:32
アサーティブでは、「4つの柱」と「12の権利」を学びます。これはコミュニケーションスキルというより、マインド(心・精神)です。つまりアサーティブ・コミュニケーションは、例えばTPOに即したスムーズな会話の達人になることを目標とするのでなく、言葉をどんなふうにやりとりすれば、お互いを人として尊重し合いながら信頼関係を築くことができるかを体得することを目指しています。
アメリカでのアサーティブの歴史をたどると、1950-60年代の黒人解放運動、1970年代以降の女性解放運動や性的マイノリティの運動が、アサーティブを積極的に取り入れ、発展させてきました。アサーティブは、国籍や人種、性別や性指向・性自認、年齢や容姿、経済力や社会的地位など、集団や個人のさまざまな違いにもとづく差別によって、不利益を強いられてきた人びとが自己信頼を取り戻し、人としての権利に目覚め、他者と信頼し合って生きていくための力となります。
性的マイノリティは現在、LGBTと一括りにされていますが、これを一括りにしたのは性的マジョリティ(身体と心の性自認が一致し、異性を愛する人たち)の社会です。彼らは人口のおおよそ9割を占め、政治的決定権などを独占する社会的強者でもあります。彼らは自分たちを正常とするため、少数派・マイノリティを異常と見なし、長い間その存在を無視し、病気扱いしてきました。L(レズビアン)やG(ゲイ)またB(バイセクシュアル)は性指向の違いによって異性愛社会のホモフォビア(同性愛嫌悪)を受け、またT(トランスジェンダー)は性自認の違いによってトランスフォビアを受けています。フォビア(嫌悪・恐怖)は、対象への無知から生じます。こうしたフォビアに対抗していくには、性的マイノリティ自身が自分の置かれた内外環境、特に後述する内面化について知る必要があります。
性的マイノリティの存在が明らかになってきたのは、そんなに遠い過去のことではありません。日本では、2015年以来、パートナーシップ条例を採用する地方自治体が少しずつ増えるようになってから、LGBTという言葉がやっと市民権を得てきました。わたしたちが現実に生きていることを社会に知らせ、自分たちも人間として生きる権利を得るためには、ある程度可視化する必要があり、そのためのカミングアウトは避けられないでしょう。ただそれは必ずしも、不特定多数に対し、自分の性指向や性自認を公表することではありません。
カミングアウトとは本来、自分が自分自身を受け容れることを意味します。例えば、誰かを好きになった時、相手が異性なら比較的自由に口にしやすいのに、それが同性だとなぜ口にしにくいのか? これは親を初めとする周りが「好きになるのは異性であるべき」「同性を好きになるなんて変だ」という異性愛中心の考えを当然のこととして伝えているため、いつの間にか子どももそれを自分のものとして取り入れてしまう。つまり自分が同性愛者だと気づいた時に苦しむのは、内面化した他者の価値観に対して、自分自身の本当の感情を肯定することができないからです。下手をすると、自己否定と自己嫌悪をくり返し、自分で自分を痛めつけることにもなりかねません。
異性愛を正統として積み上げられた長い歴史や文化、その「一般常識」を、性的マイノリティが自分を否定するものと感じ、生きづらさを抱えてきたのは、自分たちについての正確な情報がなく孤立させられた社会では、当然のことでした。しかも、性的マイノリティは数が少ないだけでなく、社会的弱者でもあるうえ、さらに男・女、富裕層・貧困層などいくつもの要素で社会的なランクづけをされています。多様性とは言いながら、LとGの経済格差など、多くの問題に囲まれています。
この講座では、わたしたち性的マイノリティが置かれた社会的な背景も視野に入れながら、自分の本当の望みを知り、それを実現するためのコミュニケーションの方法と心構えを仲間とともに学んでいきます。アサーティブなコミュニケーションを体得して、一人の人間として自由に強く生き抜く力を手に入れようではありませんか。
©Sawabe Hitomi
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★☆ 信頼関係を築くためのアサーティブ講座 ☆★
・日時:2020年3月20日(金祝)、21日(土)10:00~17:00(昼休憩あり)
・会場:東京都新宿区の地域センター(お申し込みされた方のみにお知らせします)
・定員:10名
・参加費:2日間で12,000円(テキスト代込み)※要事前申込み
・参加条件:両日とも参加できる。性的マイノリティ女性、アライ女性の方(疑問点はどうぞご相談ください)
・講師:矢田早苗さん(アサーティブトレーナー歴15年。社会的マイノリティのアサーティブ・トレーニングに尽力)
※2020年3月17日(火)20:00締め切り
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